1.訓練内容等について
聴導犬の訓練は、基礎訓練、聴導動作訓練及び合同訓練の3段階において行うことを基本とし、それぞれの訓練記録を作成、保管すること。また使用者への引き渡し後も、継続的な訓練及び指導を行うこと。
なお、訓練においては、声による指示だけではなく、手などの合図でも確実に指示に従うように訓練を行うこと。
1 基礎訓練
基礎訓練とは、犬に対する基本的なレベルの訓練をいう。なお、聴導犬については、介助犬等と異なり動物保護管理センター等で保護された犬などの中から適性のある犬を候補犬として訓練するケースが多いことから、社会性を身につけさせるための訓練について考慮する必要がある。
(1)基礎訓練においては、概ね次のような基本動作を確実に行えるよう訓練すること。
- [1]合図したら来る
- [2]座る、伏せる、待つ、止まる
- [3][2]の状態について、解除の意思表示があるまで維持できる
- [4]強く引っ張ることなく落ち着いて歩く
- [5]指示された時・場所で排泄できる
- [6]食物、他の動物や音響(聴導動作に必要な音を除く。)など様々な刺激や関心の対象を無視できる
- [7]使用者に注目して集中することができる
- [8]指示された場所(部屋、車等)に入ることができる
- [9]人と接する楽しさ・喜びを感じることができる
(2)上記の基本動作は、室内におけるだけでなく屋外においても行えるように訓練されなければならない。その場合、次のような環境においても、必要に応じて可能な限り訓練を行うこと。ただし、その際には、受け入れ側の事情にも配慮しつつ、犬が一定程度習熟された段階で実施するものとし、訓練者は周囲の人や施設に迷惑・危害をおよぼさないように責任をもって管理すること。
なお、聴導犬は一般的に小型犬が多いため、ペットと間違われやすく聴導動作に支障を来すおそれがあるので、それらを想定した訓練も必要であること。
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- [1]公共交通機関(電車、バス等)
- [2]ホテル等の宿泊施設
- [3]スーパー、百貨店等の商業施設
- [4]レストラン、喫茶店等の飲食施設
- [5]幼児や子供の多い場所
(3)基礎訓練は、実働日数として概ね60日間以上行うこと。
なお、聴導犬の訓練においては、訓練者の声による指示だけでなく手などの合図でも確実に指示に従うよう訓練する必要があるので、基礎訓練の実働日数は候補犬の状況に合わせて柔軟に設定する必要がある。
さらに、聴導犬は、候補犬の確保の段階において盲導犬等とは異なり、動物保護管理センター等で保護された犬等を訓練するケースが多いが、その場合は、人に対する信頼感の醸成、また、社会への適合のための訓練が必要であり、屋外において行う基礎訓練の前までに、一定の日数をかけて社会性を身につけさせるための訓練を行うこと。
2 聴導動作訓練
聴導動作訓練とは、聴覚障害者の日常生活に必要な音に適切に対応する動作訓練をいう。
(1)聴導動作訓練においては、使用者のニーズに応じて、概ね次のような音に対する反応動作を確実に行えるよう訓練すること。
[1]生活に必要な音を覚え、使用者に知らせる
(例)
- (ア)ドアノック・呼び鈴・チャイム
- (イ)目覚まし時計、キッチンタイマー等の各種タイマー
- (ウ)ファックス、携帯電話等の通信機器
- (エ)火災報知器
- (オ)他人からの呼び声
- (カ)赤ちゃんや幼児の声
- (キ)やかんの沸騰音
[2]音源に反応し音源場所に行く
[3]音源に反応し使用者を音源場所に誘導する
[4]音源に反応し使用者に音源場所を明確に示す
[5]火災報知器等の警報音や危険信号を知らせる
[6]後ろからの自転車のベル、自動車のクラクションを知らせる
[7]その他使用者が求める音に対する反応動作
(2)上記の聴導動作は、室内におけるだけでなく、必要に応じて屋外においても行えるように訓練されなければならない。
(3)聴導動作訓練は、実働日数として概ね100日間以上行うこと。但し、聴導動作訓練は基礎訓練と並行して実施して差し支えない。
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(4)聴導動作訓練は、専門職との協力体制によって使用者の障害とニーズについての正しい評価に基づいて作成された訓練計画により行うこと。
(5)聴導動作訓練の過程において、使用者と候補犬との適合評価をできるだけ早期に行うこと。
3 合同訓練
合同訓練とは、使用者本人が犬に指示をして、基礎動作及び聴導動作を適切に行わせることができるようにする適合訓練をいう。
(1)合同訓練においては、概ね次のような訓練及び使用者に対する指導を行うこと。
[1]使用者の障害やニーズに合わせた訓練
[2]使用者の生活環境(室内外)に合わせた訓練
[3]使用者に対する犬の飼育管理、健康管理、給餌、排泄等に関する指導
[4]公共交通機関、宿泊施設、商業施設及び飲食施設等の利用施設に同伴する訓練
(2)合同訓練においては、使用者に対する犬とのコミュニケーション手段の指導を行うこと。
(3)合同訓練は、実働日数として概ね10日間以上行うこと。
(4)合同訓練の最終段階では、使用者の自宅、職場又は学校において(1)の[1]から[3]の内容を概ね5日間以上行うこと。
(5)(1)の[4]については、受け入れ側の事情にも考慮しつつ、実施するものとし、訓練者は周囲の人や施設に迷惑・危害をおよぼさないように責任をもって管理すること。
4 継続的な訓練・指導
聴導犬使用者の障害やニーズの変化あるいは環境の変化等に対応するため、犬の引き渡し後においても継続的な訓練及び指導を行うこと。
(1)継続的な訓練及び指導は、概ね次の点について行うこと。
[1]使用者の障害やニーズの変化に応じた補充訓練
[2]環境の変化に応じた追加訓練
[3]使用者の必要に応じ、犬の基礎動作及び聴導動作の再訓練
[4]聴導犬の健康状態及び行動・作業状況の確認と指導
[5]犬のリタイア時期及びリタイア後の対応についての相談・指導
(2)最低1年に1回は、(1)の[1]から[4]の内容について使用者から報告を求めるとともに、必要に応じて自宅を訪問する等により継続的な指導を行うこと。なお、最初の1年目は2~3ヶ月に一度は報告を求めること。
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